『金色の喜び』 碧野 直
悲しい事があると、ぼくは夜空見上げます。
紺色の空がぼくを丸ごと包みこんでくれるから。
そして涙を一粒、流します。
その涙を包むために空から星がひとつ、落ちてきます。
ぼくの心に星がひとつ、落ちてきます。
寂しい時、ぼくは夜空を見上げます。
大きな月が遊びにおいでと声をかけてくれるから。
そして涙を一粒、流します。
その涙を包むために空から星がまた一つ、落ちてきます。
ぼくの心に星がふたつ、輝きます。
悲しい事はいっぱいあります。
寂しいときもいっぱいあります。
ぼくが涙を流す度、空から星が降ってきます。
ぼくの心に金色の星があふれんばかりになったとき
となりで泣いてる子の胸に、そっと一粒分けました。
その子の胸で輝く星は、その子の顔も輝く笑顔に変えて
くれました。
それからぼくは自分の心の星を泣いてる人に届けてあげる
旅に出ました。
心の星が減るごとに、輝く笑顔が増えていきます。
そうしてぼくは気づくのです。
いま夜空を見上げるとき、優しい笑顔でいることに。
〜 『金色の喜び』 碧野 直 〜
